高血圧 ESCガイドライン2024
2024年に改訂された高血圧に関するヨーロッパのガイドラインの紹介です。
https://doi.org/10.1093/eurheartj/ehae178
- [Elevated BP ]カテゴリーの導入
- 新たな収縮期血圧(SBP)治療目標の導入
- 降圧薬について
- フレイルや高齢者に対する柔軟な治療アプローチ
- その他の新たなライフスタイル介入
- 治療フローチャート
[Elevated BP ]カテゴリーの導入
これまで「高血圧」とされる140/90 mmHg未満でも、120-139/70-89 mmHgの範囲にある血圧を持つ人に対しても、新たに「昇圧」というカテゴリーを設け、特にリスクの高い患者にはより積極的な管理を促しています。このカテゴリーは、以前の「前高血圧」という概念に類似していますが、より明確な基準を示しています。
新たな収縮期血圧(SBP)治療目標の導入
従来のガイドラインでは、ほとんどの患者に対してまず収縮期血圧(SBP)を140 mmHg未満にすることが推奨され、続いて130 mmHg未満を目指すという二段階アプローチが主流でした。2024年のガイドラインでは、最初からほとんどの患者に対して 120-129 mmHg を目標に設定することが推奨されています。この厳格な目標設定は、近年の臨床試験による証拠に基づいており、より低い血圧目標が心血管疾患(CVD)のリスクを大幅に減少させることが確認されたためです。
降圧薬について
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併用療法の推奨
多くの患者で1種類の薬だけでは効果が限定的であることが多いため、最初から2剤の併用療法が推奨されます。特に、血圧が目標よりも大幅に高い患者やリスクの高い患者(糖尿病、腎疾患、心血管疾患を持つ患者)においては、単剤療法では不十分なことが多いため、併用療法が効果的です。 -
固定用量併用薬(SPC)の使用推奨
固定用量の併用薬(SPC)は、患者の服薬アドヒアランスを向上させるために推奨されており、すべての高血圧の段階で推奨されるようになりました。SPCは、1回の服薬で複数の薬効成分を摂取でき、患者にとって服用が簡単になることで、治療の持続性が向上します。 -
併用する薬の組み合わせ
ACE阻害薬またはARBとカルシウム拮抗薬、または利尿薬との併用が、最も推奨される組み合わせです。これらの薬は、相補的な作用機序を持つため、より効果的な降圧作用と臓器保護効果が期待できます。
フレイルや高齢者に対する柔軟な治療アプローチ
フレイルや85歳以上の高齢者に対しては、血圧の目標を厳格にするのではなく、患者個々の症状や状態に応じて、収縮期血圧をできる限り「現実的に達成可能な最低限の範囲」にするという「ALARA(As Low As Reasonably Achievable)」の原則が採用されています。高齢者やフレイルな患者では、過度な血圧低下が転倒や意識障害などのリスクを増加させることが知られています。このため、個々の患者の状態に応じた柔軟な血圧管理が強調されています。
その他の新たなライフスタイル介入
今回のガイドラインでは、従来の食事制限や運動療法に加えて、 カリウム摂取の推奨 など新しいライフスタイルの変更が強調されています。これにより、薬物療法を開始する前により多くの患者が生活習慣の改善による血圧管理を試みることができるようになっています。
治療フローチャート
